Seikoが子供たちにアートを教えるということで、アシスタント兼カメラマンとして同行させてもらいました。
5月の雲ひとつない晴天のなか、三田市にある自然豊かなとある畑にやってきました。
「自然の中で思いっきり絵を描いて、思いっきり楽しもう」という造形作家Seikoによるこの企画、今回の主役はこちらのお二人です。
ソーくん(6才)カエちゃん(3才)の仲良し兄弟です。
はしゃぐ気持ちをおさえ、Seikoから怪我をしない為の注意点や絵を描くことの大切さなどのお話をしっかり聞いた後、まずはみんなで協力してキャンバスから作ります。
ブルーシートの上に100cm×80cmの模造紙を2枚重ねてのりで接着します。子どもたちにはとても大きい100cm×160cmのキャンバスができました。
用意した画材に興味深々の二人。
よくあるお絵かき教室のように最初から課題が与えられているのではなく、こんな材料があるけど、どんなものが出来るかな?というようなレッスン内容です。
たくさんの画材の中から好きな色を使って、さてどんな作品が生まれるのでしょうか?
Seikoはこの白いキャンバスに子どもたちを向かわせ、子どもが自ら何を描きたいかイメージできるまで待ちます。これはイマジネーションを自由に自分で働かせることを大切したいSeikoのこだわりです。
すると「海の中の生き物が好きだからそれを描きたい」という答えでした。ソーくんはマグロを食べるのが大好きw
どうやったら頭の中のイメージを表現できるのかSeikoと一緒に考えながら・・・
まずは真っ白なキャンバスに豪快に絵具を落としていきます。
使用しているのはいわゆる普通の水彩の絵具ではなく
アクリル絵具を使用します。水で溶かして描くのは同じですが、水彩より発色がよく一度乾いたら絶対に水で溶けない性質なので、非常に耐久性がいいらしいです。紙だけではなく、板やコンクリートなど色々な材料に適している絵具なんですね。
絵具をキャンバスに落としたところで、次はローラーの登場です。
このように使うのですね。ローラーの取り合いをしながら、落とした絵具を伸ばして複数の色が合わさり見事な青が広がっていきます。
ペタペタ足を使いだしました。
もちろん手のひらも。二人で仲良く、楽しそうに海を作っていきます。
全身を使って五感を使って、自然いっぱいの中で作品を創作するのに、はみだしてはいけない、裸足で歩いてはいけない、服をよごしてはいけないとかは気にしなくていいのです。
気が付けばキャンバスいっぱいに鮮やかで綺麗な海ができていました。もうすでに立派な作品です。
この海に何を描くのか・・・海を見つめ心をこめて集中しています。
ここからカエちゃんは、Seikoの用意した型を取ったこのキャンバスに色をのせていきます。何ができるのでしょうか。
次にソーくん、海に泳ぐ生き物を描いていきます。パレットに絵具をのせ色を合わせて、生き物の色を出していきます。
Seikoのアドバイスは、絵具の使い方・色の作り方・筆の使い方などの絵を描くための必要最低限の技術をわかりやすく教えるのみです。
あとはほめる。
「すごく面白いね。」
「すごく上手だね。」
「あなたならどうする?」
子どもをその気にさせ考えさせるのがとても上手です。(大人もw)ソーくんも全く迷いはありませんし、Seiko自身がとても楽しんでいます。
ボクなら「ここをこうしたほうがもっといいよ」「この色はだめだよ」とか言ってしまいそうです。
すべて教えられて作ったものは子供の力にならない、自分で想像し答えを見つけていくのが大切なのですね。
かわいいタコです。本当に楽しそうに描いています。
ボクも小さいころは線を描き、線が残ることに驚き、それ自体が楽しかったことを思い出しました。
成長するにつれ学校では型にはまった教育になり、「はみだしてはいけない」「こうでなければならない」などが気になるようになるうえに、絵が上手や下手で評価されるようになります。大人になるとそれで絵を描くことが嫌になっていく人も多いので、「子どものころを思い出して上手く描こうとかは考えずに、正解はないので思いっきり自由に楽しんで描いてほしい。」とSeikoは言います。
そんなことはこの子たちにはまだ関係ありません。
それにしても筆が止まりませんね、今度はクジラでしょうか。
さあここで休憩タイムです。この間にアクシデントが・・・
なんとっ!鳥にサカナをつつかれていたのです。目をはなした隙にキャンバスに穴を開けられてしまいました。
鳥にもちゃんと水面下に泳ぐ生き物のすがたを証明してみせたソーくん。
この偶然のアクシデントもアート作品の一部になっていきます。破れて穴の開いたキャンバスの下に紙を重ねて修正します。では創作を続けましょう。
あっ、ヒトの姿も・・・その両手はしっかりとつながれています。
日差しも傾いてきました。お昼過ぎからはじめてずっと集中して創作だけに没頭しています。
それにしてもすごい集中力です。Seikoが集中力を切らさないようにタイミングをみては声をかけ続けていました。
クリエイティブな世界に没頭するうちに、集中力が身につき最後までやりとげるねばり強さが培われていきます。
二人はもともと非常に感性の豊かな子なので、子どもなりに考えて、大人には理解しがたい発想で自由に描いているのです。
子どもにとって絵を描くことは大人とはまた違う意味をもっているのでしょう。自分の思ったこと、考えたことを伝えるコミュニケーション手段でもあるので、強いメッセージが隠されていることもあるそうです。
さあ、だんだん生き物が増えてきましたね。
点々は生き物たちのエサとなるオキアミだそうです。みんなで同じ釜をかこんでいるのを表現しているのかな?
そしていよいよクライマックス。ついに完成です!!
作品は農具を収める納屋に干されました。里山あるあるw
この笑顔。いままで描いたことのない超大作を仕上げた達成感で満たされています。思いどおりに描けたのかな?
カエちゃんが色を塗っていたのはなんともかわいいドレスだったのです。大事そうに出来上がったドレスを自分にあわせてご満悦でした。ときより吹く強風にドレスを飛ばされそうになり「かぁぁっぜぇぇぇぇぇっ~!!」と風に向かって怒っていましたw
みんな仲良く生き生きと生命が躍動している絵が、ここに完成しました。
心をこめて集中し、全力を出した、こだわりの作品。
ボクは力強いメッセージを感じ、その美しさに感動して、しばし見とれてしまいました。
TVゲーム、スマートフォン、パソコンなど、子どもたちが外へ出なくても楽しめる環境の中で、自然体験やアート体験の機会が少なくなると、美しいものを見ても美しいと感じる心が育ちにくいということも懸念されます。
美しいと感じる心は、生まれた時から当たり前のように身に付いているものではなく、まわりの環境や人とのコミュニケーションのなかで体験したり、自然の中で学習したりして獲得してゆく感情なのです。
お絵かきなどの創作活動をすることは、子どもの自由な発想力や思考力と、なにより豊かな感性をより伸ばすことができるのでしょうね。
いつまでも自然とアートを身近で感じてほしい、造形作家Seikoの里山アートスクールでした。
Seikoは子どもたちの純粋な美しいココロに触れ、また新しい作品つくりへの強いインスピレーションを受け取ったそうです。
子どもたちはこれからも、少しぐらいはみ出したっていいさ、でしっかりと夢を描いて育っていって欲しいですね。
いぬくま!!!