「ゲンキ、お父さんなぁ外車買ってん。」
といって父がおもむろに自動車のカタログを見せてきたのが今年の正月。
そのカタログには思いっきり「ホンダ」のマークが刻まれていました。
「納車までな、6カ月待たなあかん。外車やさかいにな。」
その顔はどこか誇らしげでした。
半年の納期と謎の外車というキーワードに少し酔っているようです。
「ほんまはまだ乗り換えなくてもいいんやけどな、もう12年も乗ったからな。」
と、自分に言い聞かせるようにカタログを見つめる父は、それが紛れもない日本車であることに真剣に気づいていないように見えました。
カタログを見せてもらうと、父が契約したのは「シビック」というクルマでした。
最近あんまり名前を聞かなくなっていた「シビック」ですが、日本から離れ欧州に販売の拠点を移していたようです。
このたび、欧州での留学を終えて日本市場で販売を再開、といったところなのでしょうか。
出典:Hondaホームページ
この「シビック」には・・・
セダン
出典:Hondaホームページ
ハッチバック
出典:Hondaホームページ
タイプR
出典:Hondaホームページ
と、三種類のラインナップがあるようです。
どのタイプももうすぐ70歳になるおじいさんの乗るクルマでは無いような・・・
「セダン」なら大人のスポーツセダンのような感じでアリな気もしますが、父が選択したのは「ハッチバック」。
出典:Hondaホームページ
何がその気にさせたのか不思議ですが、まだまだ人生の攻めが足りてなかったようですw
この「シビックハッチバック」が、ホンダのイギリスの工場で生産されて日本に輸入されてくるということで、冒頭の外車というくだりになったということですw
カタログによると確かに、海外工場の受注生産で欧州仕様なので、純粋に日本市場をターゲットにしている感じではなさそうですね。
そういう意味では輸入車ですし、外車なのかもしれませんw
先日、郵便局で偶然父と出会ったので忘れていた納車のこと聞いてみました。
すると翌日がちょうど納車日ということで、面白そうなのでつきあうことにしました。
当日の朝・・・
12年連れ添った「アコードワゴン」をきれいにして一生懸命カメラに収める父。
ディーラーに向かう車内でこのアコードワゴンがまだまだ乗れることをSeikoに力説していました。
父はSeikoがいるとかっこつけているのか、いつも話が大きくなりますw
「この車は外国ではまだまだ新車のようなものや。ソビエトに売られるんや、違うわ、ソ連や。ん?ちゃうわ、ロシアやがなw」
「この車は燃費が悪いからあかん。こんどの車は燃費がめっちゃいいから乗り換えるんや。もうエアコンも効かんしな。12年も乗ったらもうあかん、もう乗れんわ。」
と、なかなかよく効く冷房の車中で、出口が全然違う話をしていましたw
「本当はな、お父さん白が欲しかったんやで。でも、営業マンに黒にしたほうがいいって言われたから黒にしたんや。あ~お父さん、ちょい悪やな、いかついなぁ。」
と言って満足気でした。本当は黒がよかったんでしょうw
「最初はな、あの車が欲しかったんやで。でもな、あの車はうちの駐車場から少しはみ出すからアカンかったんや。」
とうれしそうに指さした先の車は、高級車ベンツでした。
Seikoに得意気に話ししていましたが、それを言うなら大幅に「予算がはみ出す」でしょう・・・w
そうこうしているうちにディーラーに到着し、新車とのご対面を待ちました。
ちなみに父はまだカタログでしか「シビックハッチバック」を見たことがなく、一度も実車を見たことがないそうです。
それで、どうして「シビックハッチバック」にしたのか謎だらけですw
念願のご対面。
おぉっ、かっこいい・・・!!
アコードワゴンとも最後の別れです。
比べてみるとアコードワゴンが小さく見えます。
アコードワゴンは決して小さい車ではありませんが、シビックのほうがブリブリしていて一回り横幅が大きくてマッチョです。
ボクの知っているシビックはもっとコンパクトだったような・・・。
そこは流石の留学帰りですw
嬉しそうに乗り込んだ父。
全身ギラギラのフルブラック。ホイールまでブラックじゃないか。
父よ、いかついぞ。
センター出しマフラー。18インチスポーツタイヤ。
欧州仕様だけあって、筋骨隆々のマッチョボディー。やったな父よ。
営業マンより操作の説明を受ける父。興奮してほとんど頭に入っていないのでしょう。
「これは外車ではありません。」と営業マン。
以後、父の口から「外車」というキーワードは消えましたw
エンジンをかけると野太いエキゾーストノートが・・・正真正銘のスポーツカーです。
出典:Hondaホームページ
内装もスポーティーで外車のような質感でびっくり。
ディーラーを後にして、走り出した父とシビック。
「トルクが、トルクがすごいぞぅ~、おっ運転もしやすいなぁ。」
「ゲンキ~、やっぱり黒にしてよかったかも~。」
と興奮し嬉しそうでした。
70歳を前にして、父をその気にさせた「シビックハッチバック」。
なかなか過激なルックスで、ボクは若者が乗るクルマだと勝手に思っていましたが、おじいさんが乗ってもかっこいいクルマだと思いました。
走りを予感させるクルマですが、高齢者の暴走を予感させる・・・ということにならないことを願うばかりですw
いぬくま!